ポークビンダルーを作る。
ビンダルー(vindaloo)とはビネガーとニンニクを使った煮込み料理。
ポルトガル人がインドの西海岸地方(ゴア)にもたらしたとされる料理で、酸味と辛味の調和がポイント。
ヴィーニャ・ダロス(vinha d'alhos)という料理から由来したとされたり、ヴィーニョ(vinho=酢)+アーリョ(alho=にんにく)から付けられたという説もある。
ゴアはポルトガルの支配があったことから、あまりインドらしくないインドと言える。
文化も宗教も、インドでありながらインドとはちょっと違う風が吹く。そんな土地の料理「ポークビンダルー」を作る。
日本で呼ぶにはカレーの一種だが、スパイスの効いたシチューだと思った方がしっくりくるような気がする。
材料(3-4皿分)
- 豚肩ロース・・・400g
- 玉ねぎ・・・2個
- トマト・・・2個
- オリーブ油・・・大さじ2
- 漬け込み用
- ホールスパイス
ビンダルーを作る上で酸味は必須。ワインビネガーがベストだが米酢でも良い。
作り方
①豚肩ロースを漬け込む
まずは下準備として豚肩ロース肉を用意、スパイスとビネガーに一晩漬け込む。
豚肩ロースは塊を用意した。約400g。
ものぐさなあなたはカット済みのものを購入しても良いが、ブロックで仕入れてゴロゴロとした食感を残すように大きめに切るとそれっぽくなる。
部位は脂が適度な肩ロースがベスト。
この塊を30-40g程度になるくらいでカット。まぁこの辺は適当で良い。
カットが小さすぎると存在感が無くなってしまう。
カットが大きい分にはさほど問題無く、十分に煮込むので火の通りも心配要らない。
続いて、漬け込み液を作る。
ビネガーをベースとして各材料を保存袋に入れるだけ。
スパイスは揃わなければ市販のカレー粉を入れても良い。ほぼ同じである。
ならば何故わざわざスパイスを揃えるのか。それは自分にも分からない。
これらの材料をすべて保存袋に入れたら、先ほどカットした豚肉を入れていく。
豚肉全体に行き渡るように揉み込む。ローレルがパキッと半分に砕けるくらいを目安としている。
袋の中身が馴染んだら、空気を抜いて、冷蔵庫へ。
こちらは冷蔵庫で一晩置いておく。このまま冷凍保存も出来る。
②野菜を切る
- 玉ねぎ・・・2個
- トマト・・・2個
豚肉を漬け込んだ翌日、野菜をカットする。
玉ねぎもトマトもビンダルーに溶かしこんでいくようなイメージなので、やや小さめのカットをする。
玉ねぎは薄めのスライス。トマトはいい感じの角切りにしておく。トマトは細かくし過ぎると汁が失われてしまうが、かといって大きすぎるとトマトの皮が気になる。1/8のくし切りにしたものを更に3等分するくらいで丁度良い。
なお、玉ねぎはみじん切りでも問題無い。お好みで。
③スパイスを熱する
具材の準備が出来たら、油にスパイスの香りを移していく。
オリーブオイルを入れ、火をつける前にホールスパイスを入れておく。
ホールスパイスを入れ終えたら弱火で着火。熱した油に直接入れないように。
じっくり加熱しながら、油にスパイスの香りを移す。
たまに鍋をゆすり、スパイスが焦げないようにする。
しばらくするとカルダモンはぷっくりと膨らみ、唐辛子やコリアンダーは黒ずんでくる。こうなってくると香りも立ってきているはず。
ここで火を止め、ちょっともったいない気もするがスパイスたちにはご退場いただく。
④玉ねぎを炒める
- カットした玉ねぎ(②)
スパイスを取り除いた鍋で、玉ねぎをじっくり炒めていく。
弱火~中火くらいでじっくり焦がさないように。
玉ねぎ2個分のスライスなのでかなりの量。これが半分くらいの嵩になる。
加熱、ちょっと混ぜて、再び加熱、をしばらく繰り返すと徐々に玉ねぎの色が透き通る。
玉ねぎの水分も出てきて、今度は煮込んでいるようになる。
かれこれ20分くらい加熱し続けると、こんな感じで玉ねぎから出た水分も蒸発し始める。
旨みが凝縮しているような香りがする。
水分が無くなり始めたら、焦がさないように注意。
⑤豚肉を入れる
- 漬け込んだ豚肉(①)
ここで昨晩から漬け込んでおいた豚肉に登場していただく。
漬け込み液ごと鍋に入れる。
豚肉を焼いていくように鍋の中身を混ぜる。
結局この後豚肉は煮込んでいくわけだが、その前に焼き目を付けることで香ばしさが出る。
ただし、焼き目を付けることに注力しすぎると焦げてしまい、スパイスの繊細な香りが全部焦げの風味に変わってしまう。あくまで豚肉表面の色が変わるくらいまで焼いていく程度に留める。
⑥トマトを加えて煮込む
- カットしたトマト(②)
豚肉の表面の色が変わってきたら、トマトを加える。
トマトは木べら等で潰しながら混ぜていく。
全体に馴染んだら、蓋をせずに煮込む。まずは15分程中火で煮込む。焦げないように様子を見つつ、たまに全体を混ぜる。
水分が足りなくなりそうならば水を100ml程度加えても良い。あまりに水っぽいと味がぼやけるため、カレーらしいとろみを感じるよう調整する。
その後、火を弱めて更に15分程弱火で煮込み続ける。
この時にも水分量に注意しつつ、焦がさないようにする。ここでまだ水分量が多いようなら、追加で加熱し続けることで調整する。
鍋の音を聞きながら、コトコト、グツグツと聞こえ続けるようにする。シューシュー、チリチリといった音がするならば水分が無くなってしまっており焦げつき始めている。
これくらいの水分の量を目安に。これにて完成となる。
食べてみると酸味が新鮮。しっかりビネガーの風味が活きており、知らずに普通のカレーだと思って食べたら調味料を取り違えたんじゃないかと思ってしまいそうだ。
その中から順番に顔を出す複雑なスパイス。そうそう、カレーはこうでなくちゃ。やっぱり日本でこの料理は何かと聞かれればカレーだ。現地の人にとってはカレーという呼び名は不本意かもしれないが。
野菜はすっかりと溶け始めているが、玉ねぎもトマトも存在が分かる。
玉ねぎとトマトの甘みに抱かれながら、スパイスを感じる。が、決して辛すぎない。お店などでは辛口に仕上げられることも多いポークビンダルーは、お好みでもっと唐辛子やカイエンペッパーを追加する等しても良いだろう。
豚肉が柔らかく煮込まれつつも、しっかりとした存在感を誇る。牛肉だったらホロホロにほぐれてしまっていただろう。これは豚で正解。
異国の風を感じる料理。ポルトガルっぽくもあり、インドらしさはあんまり無いけどなんだか東ヨーロッパっぽさもある不思議な味わい。
あまり知らない国の料理を作ってみるのは、楽しい。