魯肉飯をご存じだろうか。
コンビニ等でも見かける機会が増えてきたので、そこまでマイナーでも無くなってきた気がする。
台湾料理である「魯肉飯(ルーローハン、"滷肉飯"とも)」は、豚バラ肉を甘めの味付けとスパイスで煮込んでご飯にかけたものとなる。
中国料理にも近しいが、何となく日本料理(九州~沖縄)とも親和性があるような、不思議な料理である。
日本では「丼」のカテゴリーの料理であり、丼に盛ったご飯の上に並々とかけられて供される。丼ものとして一品で完結できるほど大盛りで出てくることもしばしば。
一方、台湾ではご飯の種類の一つに過ぎない。wikipedia曰く、「定食の白米をルーローハンに置き換えたようなイメージのポジション*1」の料理であり、比較的小ぶりな盛り付けとなるようだ。
日本では無印、ファミリーマート、セブンイレブン、松屋などが「魯肉飯」及びそれに近しい名称の商品を出した。
どちらかと言えば角煮丼のようなものもあったが、味付けやスパイスは台湾風となっており、雰囲気は楽しめるものだった。
今回はそんな魯肉飯を本場っぽく、本格的に作っていく。
完成まで3日かかるため、レシピを参考にする場合はご留意いただきたい。
材料(4人前)
- 豚バラ肉(塊)・・・500g
- 下味用調味料
- 醤油・・・小さじ2
- 紹興酒・・・小さじ2
- サラダ油・・・大さじ1.5
- 茹で用材料
- ネギの青い部分・・・1本分
- にんにく・・・2片
- 水・・・3,000ml
- きび砂糖(もしくはザラメ糖など)・・・大さじ2.5
- 煮込みタレ用
- 味付きたまご
- たまご・・・好きなだけ
- 醤油・・・25ml(2個)、35ml(3個)
ポイント
茹でて、焼いて、茹でて、煮る。手間暇が生む旨さ
しっかり2日がかりで作っていくので、お手軽簡単なレシピをご所望な方はそういったものを探してほしい。
豚肉を茹でて、焼いて、更に茹でて、その後煮るという何とも面倒臭い工程を取る。
その分旨さは格別。時間さえ許せば是非。
作り方
①豚バラの下茹で
- 豚バラ肉(塊)・・・500g
まずは豚バラ肉500g分を用意。どうせ最終的に切るのだが、薄すぎると火が通り過ぎてしまう。
一塊あたり150~350g程度だとベスト。大きすぎる場合はカットしておく。
寸胴に湯を沸かし、豚バラ肉を投入。5分程茹でる。
このとき、別にアクは取らなくて良い。この茹でるのに用いた湯はこのまま捨てちゃうので。
この5分間の茹でる工程により、臭みや脂を適度に抜くことが出来る。
これだけで既においしそうな気配。チャーシューみたい。
まぁ実際のところまだ中心部は全然生なので食べてはいけないが。
下茹でを終えた豚肉はこのまま粗熱を取り、冷蔵庫で一晩冷やしておく。
続きはまた明日。
②豚バラに下味を付ける
- 下茹でした豚肉(①)
- 下味用調味料
- 醤油・・・小さじ2
- 紹興酒・・・小さじ2
すっかり冷えた豚バラ肉を取り出し、細かくカットする。
大きさは今回は2cm幅とした。
茹でて冷やしておくと、生の状態でネチネチと切るよりも断然カットしやすい。
切り終えたら、醤油と紹興酒を小さじ2ずつ用意。
これらを肉にかけて、揉み込んで、馴染ませる。その後10分も置いておけば大丈夫。
あんまり浸け過ぎるとそれはそれで豚の旨みも出てきちゃいそうで良からぬ気がする。
③豚肉表面を焼く
- 下味をつけた豚肉(②)
- サラダ油・・・大さじ1.5
味が馴染み、調味料をすべて吸ったら、豚肉表面を焼いていく。焼くことにより香ばしさが生まれ、表面を焼き固めることにより旨みを閉じ込める。
フライパンにサラダ油を敷き、熱する。
油が十分にサラサラになったら中火で5分程度炒める。
これは中心部まで火を入れることが目的ではなく、表面に焼き目を付けるのが目的。
木べらで動かしながら満遍なく焼きつけていく。
徐々に脂がにじみ出し、おいしそうな音と香りがしてくる。
5分程度炒め続ければ表面はカリッとしてくるはず。そうなってきたら頃合いだ。
「このまま食べても十分おいしいのでは…?」という気持ちをグッとこらえ、炒めた肉をザルにあげておき余分な油を切る。
④香味野菜を準備する
- 茹で用材料
- ネギの青い部分・・・1本分
- にんにく・・・2片
- 水・・・3000ml
豚肉は脂を切り終えたら再び寸胴で茹でる。
そのための香味野菜を準備しておく。
ネギは頭の青い部分だけを用いる。良い感じにカットして使う。
にんにくは2片用意。皮を取り、半分に輪切りしておく。
水は寸胴に3000mlほど用意。もうちょっと少なくても良いかも。鍋や寸胴のサイズに合わせて調整してもらえれば。
⑤フライパンに残った旨みをこそげ取る
先ほど用いたフライパン、まだ洗っていなければ残っている旨みをこそげ取って寸胴に合わせたい。
まずは余分な脂をキッチンペーパーで吸い取り、寸胴に用意する水のうち100ml程度を入れて加熱する。
ここに豚の脂や調味液が残っているので、木べらでこそげ取る。取り終えたら水ごと寸胴に入れて合わせておく。
⑥豚肉を茹でる(2回目)
- 炒めた豚肉(③)
- 香味野菜(④)
- 水(⑤)
改めて、寸胴の中の水へ豚肉と香味野菜をイン。
これらを強火にかけ、沸騰するまでアクを取りながら待つ。
こんな感じでアクがどんどん出てくるので、これらを綺麗に取り除く。
沸騰したら中火に落とし、30分程茹で続ける。
30分煮込んだらこんな感じ。
良い香りがする。
「このまま食べても十分おいしいのでは…?」という気持ちをグッとこらえ、豚肉だけを分ける。
このゆで汁も出汁として使用するため、取っておく。(ネギとにんにくにはご退場いただく。)
⑦豚肉を炒める
- 茹でた豚肉(⑥)
- きび砂糖(もしくはザラメ糖など)・・・大さじ2.5
- ゆで汁(⑥)
茹で終えた豚肉を鍋へと移し、きび砂糖を大さじ2.5杯かけて加熱していく。
色と香りを付ける重要な工程。
しばらく炒めていくと徐々に色が変わり、カラメル色へ変化していく。
豚肉が砂糖を纏い、照りが出てきたら頃合い。香りは香ばしさが混じってくる。
香りに香ばしさが混ざったら、それは則ち焦げる直前の合図でもある。
このタイミングで取っておいたゆで汁を浸るくらいまで投入して色を止めておく。
⑧煮込む
ここで、タレの材料をすべてぶち込んでいく。
しょうが、にんにくはチューブでも刻んだものを入れても良い。いずれにしても隠し味程度になるくらいの量が良い。
グラグラ煮込むとエグみや雑味が出る物もあるが、これも台湾の屋台風ってことで。なんかずっと煮込み続けているのを椀に持って出してくれる的なお店のイメージで作る。
エグみや雑味が気になるならば、20分くらい煮込んだところで八角やクローブを除くと良い。黒胡椒をホールで入れた場合、こちらも取り除くと雑味を抑えられる。
このまま1時間ほど弱火で煮込み続ける。
ゆで汁が減っていくため、都度ひたひたになるくらいまで注いでおく。
1時間トロトロと煮込み続けることで、適度な温度で味が染み込み続ける。
このまま完成としても良いが、粗熱を取り、冷蔵庫で一晩寝かせることにする。
一晩寝かせた方が味が安定し、材料個々の主張が弱まってくる。出来立てはどうしてもスパイスがとがっていたり、材料の食感がしっかりし過ぎていたりする。
⑨味付きたまごを作る
- たまご・・・好きなだけ
- 魯肉飯の煮汁・・・25ml(2個)
- 醤油・・・25ml(2個)
本場台湾では魯肉飯にたまごは付かないらしい。
でもあった方がおいしい。その上、何となくそれっぽいし。ということでたまごを茹でる。
魯肉飯のタレで煮ていくレシピもあるが、如何せん火入れが難しい。
別で味を付けてしまう方が楽である。
まずはたまごを茹でる。
十分な量の湯を沸かし、冷蔵庫から出し立てのたまごを沈める。
きっかり7分茹でたらすぐに上げ、冷水にて冷やす。
これでかなりトロトロに仕上がる。殻をむくのが大変なほどだ。雑に剥くと白身が割れてしまうので注意。
殻を剥く方法はいくつかあるが、僕は菜箸などで細かく叩いてヒビを作ることが多い。
殻を剥き終えたら、たまごとともに魯肉飯の煮汁と醤油を1:1で保存ジップ袋へと入れる。
たまご2個なら25mlずつくらい。
タッパーでやっても良いが、その場合はたまごがしっかりと浸かるくらいの分量で調味液を作る。
こちらもこのまま冷蔵庫で一晩置いておく。
魯肉飯とともに煮込んで味を付けていくと固ゆでになってしまうが、これなら火が入り過ぎる心配は無い。
⑩仕上げ
魯肉飯を再度加熱して完成だ。
煮汁が飛び過ぎないよう、蓋をすると良い。温まりやすくなるし。
漬け込んだ味玉はそのまま乗せれば黄身がトロトロの状態を楽しめる。
味玉も温めたい場合は魯肉飯の鍋に入れて加熱していくが、どうしても黄身に火が入り過ぎてしまうので注意。
今回はちょっと温めてみることに。4分くらい一緒に加熱した。
完成
テラリと輝く豚肉。もう全部アースカラー。
野菜の緑や赤色など存在しないし、そういった余計なものも入れないハードボイルドスタイルだ。(味玉は追加したが)
これが良い。これで良い。
魯肉飯とともに4分加熱した味玉はこんな感じ。とろみは無くなってしまった。
温度を取るか、とろみを取るか、お好みで。
味わいはスパイスがちゃんと効いているが、調和が取れた味となっている。
コンビニとかで売っている魯肉飯は結構スパイスが強いと感じる。それはそれで異国情緒たっぷりで悪くないが、好みははっきりと分かれると思う。
時間がかかるため万人におすすめできるレシピではないが、時間を持て余したり何かムシャクシャしたときはぜひ作ってみてほしい。