夏のイメージのあるキーマカレーだが、別に冬に作ってもおいしい。
カレーはいつでもおいしい。橋本ねこの気まぐれカレーシリーズ、今回はキーマカレーだ。
以前作ったバターチキンカレーはこちら。
キーマカレーにも色々あるが、キーマ(क़ीमा)には「細切れ肉」「ひき肉」という意味合いがある。
また、宗教的理由により現地ではあまり牛や豚を使わず羊肉や鶏肉を使うことが多い。ただし、日本では調達難易度が上がるため、今回は普通に合い挽き肉を使い、やや現地感を出すために鶏ひき肉も混ぜる。
より現地に寄せるならば羊肉が良いだろう。使用するスパイスとも相性が良い。
作ってみる
レシピ(4皿分くらい)
- 挽肉・・・300g(牛160g、豚70g、鶏70gくらい)
- 玉ねぎ・・・1個
- トマト・・・1個
- にんにく・・・1片
- 生姜・・・1片
- 好みのナッツ・・・20g(味付けの無いものが良い)
- プレーンヨーグルト・・・大さじ3
- オリーブオイル・・・大さじ2
- 先入れスパイス(スターター)
- 後入れスパイス
- カレー粉・・・大さじ1.5
- コリアンダー(粉)・・・小さじ1
- クミンパウダー・・・小さじ1
- カルダモンパウダー・・・小さじ1
- カイエンペッパー・・・2振り~
- 塩・・・小さじ1
- 胡椒・・・少々
ポイント
先入れスパイスの香りを油に移す
インドカレー全般がそうだが、まずは油にスパイスを入れて火にかけ、スパイスの香りを存分に油へ移す。
この工程で用いるのは基本的にホールスパイス。粉のスパイスは焦げやすいのでこの工程は省く。
粉スパイスしかない場合は後入れの段階で何とかする。いわゆる市販のカレールゥと同様のタイミングでスパイスを入れるのだ。
玉ねぎをじっくり炒める
インドカレーは"出汁"の概念が無い。何で旨みを引き出すかと言えば、野菜と肉。今回ならば玉ねぎとトマトから十分に旨みを引き出していき、肉の旨みとミックスしていく。
「飴色玉ねぎ≠焦げ」には留意する。焦げた香ばしさはスパイスの繊細な調和を邪魔してしまう。
味が足りない時はスパイスではなく塩を足す
こちらもインドカレー全般で言えるが、最後に味見して「なんか物足りないな」って思ってもスパイスを足さないこと。余程スパイスが足りないなら効果はあるが、塩を使って味わいを引き締めて引き立たせる方が効果的。
ここでスパイスを入れ始めるともう迷いの森。最終的になんか漢方みたいな味わいの苦い薬膳になってしまう。少量の塩で調える方が良い。
作り方
①材料を刻む
- 玉ねぎ・・・1個
- トマト・・・1個
- にんにく・・・1片
- 生姜・・・1片
- 好みのナッツ・・・20g(味付けの無いものが良い)
キーマカレーなので基本的に全ての材料を細かくする。いわゆるみじん切りだ。
たまに粗くして食感の違いを楽しむのも良い。
玉ねぎは狂ったように刻む。半分に切り、縦に切り落とさない程度の切れ込みを細かく入れ、横向きにして刻む。
トマトは潰しながら馴染ませるのでどんなサイズでも良さそうだが、大きすぎると皮の食感が気になる。なるべく小さめに切ると良い。
みじん切り程細かくする必要は無い。
アーモンドは袋に入れて上から麺棒などで砕く。
にんにくと生姜は皮を取り、縦横に切れ目を入れた後、刻む。
にんにくと生姜以外は鍋に入れるタイミングが全て異なるので、混ぜないように。
②先入れスパイスを炒める
スパイスを準備する。
もし羊肉を使用するならば相性の良いクミンシードも追加したい。
シナモンはこのままだと香りが出づらいので、半分に折っておく。カルダモンも潰しておくと香りが出やすいが、取り除きづらくなるのでこのまま用いる。
鍋にオリーブオイル、スパイスを入れてから火を弱火で点ける。熱した油に入れないように。
このまま香りが立ってくるまで入れる。
しっかり引き立たせたくて焦がしてしまう人もいるが、香りが十分に上がっていれば大丈夫。仮に焦げるとスパイスが焦げの香ばしさに負けて台無しになってしまう。
目安はコリアンダーシードの色だろうか。ライトブラウンから濃い茶色へと変化している。
この香りを移す工程は、出来る限り弱火で行いたい。
温度が高まり過ぎると揚げ焼き状態になり、スパイスの表面がカラっと焦げてしまう。
完了したら火を止め、スパイスを頑張って取り除く。
この時、せっかくスパイスの香りの移った油はなるべく鍋に残しておきたいので、スパイスを取り出す際に油を切って鍋へと戻す。
特にシナモンの内部に油が取られてしまっているはずなので、鍋から取り出すときにしっかり油を切り、油を鍋へと戻す。
③にんにく、生姜を炒める
- 刻んだにんにく、生姜(①)
- オリーブオイル(②)
スパイスの香りを移したオリーブオイルでにんにくと生姜を炒めていく。
先ほどのスパイスを取り除く工程で若干温度が下がったオリーブオイルににんにくと生姜を入れ、弱火で香りを引き立たせる。
こちらも必ず弱火で。ここで焦がしてしまうと失敗だ。
実はスパイスは取り除かず最後まで一緒に調理するやり方もある。その時は食べながらスパイスを退かしていく事になるのだが、それはちょっと食事のテンポ感を損なうと思っている。
スパイスを取り除かないならば、にんにくと生姜を一緒に炒めても良い。
今回はスパイスを除きたかったので、後からにんにくと生姜を炒める。このにんにくと生姜は取り除かず、このままほかの材料とともに炒め続ける。
しんなり、馴染んできたら大丈夫。もうこの頃には香りもしっかりと立っているはず。
④玉ねぎを炒める
- 刻んだ玉ねぎ(①)
刻んでおいた玉ねぎを加える。
油でコーティングしていくように全体を馴染ませ、引き続き弱火で。
たまに混ぜてあげながら面倒を見て、10分くらいしっかりと炒める。
今回は茶色か黄色かと聞かれれば黄色、くらいで止めた。
もっとブラウンカラーになるまでやっても良いが、焦げやすくはなるため慣れた人向け。
⑤トマトを炒める
- 刻んだトマト(①)
続いてトマトを入れる。
トマトはトマト缶でも良い。一缶全てだと多すぎるので1/2くらいだろうか。
缶を使うとインド系というより洋食寄りの味になってしまうような感覚があるが、さほど大きな問題では無いと思う。
トマトも全体に馴染むように絡めていき、水分を飛ばしていく。
ここで全てを飛ばさなくても良いが、余計な水分は飛ばしていく。
トマトの水分が流れ出て、炒めているというよりも煮込んでいるような感じになる。
こうなったら焦げる心配も減るので、ちょっと火を強めて中火くらいにする。
⑥挽肉、ナッツを炒める
- 挽肉・・・300g(牛160g、豚70g、鶏70gくらい)
- 砕いたナッツ(①)
ここで挽肉を投入。
挽肉は余計な水分を入れないよう留意。解凍などをすると出てくる赤い汁(ドリップ)には旨みもあるがそれ以上に雑味が多い。先にキッチンペーパーなどで吸わせておくと扱いやすい。
ナッツもこのタイミングで投入。
今回はアーモンドを使ったが、カシューナッツでもピーナッツでもお好みで。固いナッツの方が食感が面白いが、ヒヨコ豆やレンズ豆を使っても良い。
ほぐしながら全体を混ぜ込んで炒めていき、挽き肉に油を纏わせるようにして炒める。
肉全体の色が変わるまで炒めればOK。
⑦スパイスを入れる
- 後入れスパイス
- カレー粉・・・大さじ1.5
- コリアンダー(粉)・・・小さじ1
- クミンパウダー・・・小さじ1
- カルダモンパウダー・・・小さじ1
- カイエンペッパー・・・2振り~
- 塩・・・小さじ1
ここでスパイスを準備。
入れるスパイスはあくまで一例として。好みに応じて足し引きして、自分好みの味わいにすると良い。
一度火を止め、スパイスと塩を入れて馴染ませる。
馴染んだら再び着火。この辺からは火力を弱火に落としておく。
辛さの決め手はカイエンペッパー。普通の唐辛子よりも辛めな傾向にあるため、少量でも効果を発揮する。食材をあまり赤色に染めたくないに便利だ。
逆に赤く染めたいときは韓国産甘口唐辛子やパプリカパウダーで着色していくと良い。
2振りくらいで中辛少し手前くらいの辛さ。子供は厳しいかも、くらい。
辛い物がお好きならば追加で入れていくと良い。
全て馴染んで香りが立ってきたら次へ進む。
⑧ヨーグルトを入れる
- プレーンヨーグルト・・・大さじ3
ヨーグルトを加えて全体に混ぜたら中火にして煮立たせる。
煮立ったら弱火にして、混ぜながら10分ほど煮込んで軽く水分を飛ばしていく。
⑨仕上げ
- 胡椒・・・少々
胡椒を加え、味を見て、必要ならば塩をプラスする。
時間が余っていたら、一度コンロから外して軽く冷ました後に再び温めて完成とする。一度冷ました方が、より食材同士の味が馴染む。
食べてみる
完成したキーマカレーをごはんとともによそう。
卵黄はお好みで崩していくとキーマカレーがマイルドになる。
上には彩りとしてパセリ。カスリメティを散らすとよりインドっぽくなるが、手に入りづらい上に結構クセも出るので無理に入れなくても良い。
スパイスがうまく調和しており、何かが突出することがない。みんな主役。
ナッツが良い仕事をしている。固くない程度に煮込まれているので食感が楽しめ、かつ邪魔しない。
挽肉は3種類を用いたことで、味わいが重厚になったような気がする。
鶏挽肉が意外と重要かもしれない。牛豚合い挽きのみでやるくらいなら鶏100%の方がおいしいかも。
牛豚のみでやるとハンバーグっぽくなっていくというか、だんだんヨーロッパ寄りになってしまう気がする。
醤油等の日本っぽい材料は使っていないし、出汁や味の素等も使っていないのに、この旨さ。そしてご飯にも合う。
またしてもカレーのポテンシャルの高さを感じてしまう一皿だった。