週末には、ちょっと凝ったお料理を

橋本ねこのお料理部屋( 'ω')

冬の白菜を丸ごとキムチにする

 

 


自家製の漬物、いいよね。

まぁおじいちゃんおばあちゃんか、もしくはそういう漬け物に適した野菜の産地くらいでしか作らないかもしれないけど、作ってみるとこれまた丁度良い。

 

何が丁度良いって、量や味。

自分好みの野菜を自分好みの味付けで、好きなだけ漬け込む。

そのまま放置していたら数日で枯れてしまう野菜が、1週間経っても生き生きとしているのは不思議だ。

 

もちろんそこには仕組みがあり、水分を減らしたり空気を遮断したり塩分濃度を高めたりして主に乳酸菌の居心地を良くしてあげている。これにより乳酸菌発酵が進み、おいしい漬物となる。

他の雑菌が増えてしまうと腐敗の原因になるため、塩分濃度や水分量・空気量、そして温度は重要だ。もちろん衛生管理も大事。

 

キムチを作る

今回は冬に旬を迎える白菜を使って一般的によく見る白菜キムチを作る。

作り方は色々あるが、今回作る白菜のキムチは「ポギキムチ(포기김치)というものになる。

キムチについて

キムチは日本でも広く浸透しているので説明不要だろう。日本ではキムチ=唐辛子が混ぜ込まれて赤色をした辛い漬物、との認識となっている。

現在日本で扱われているキムチは「日本人向けの甘めの和風キムチ」「韓国から輸入された辛めの本格キムチ」と大きく2パターン。どちらもおいしい。

キムチの種類

普通に「キムチ」と言った場合は白菜のキムチ(ペチュキムチ)を指す。

他にもキュウリを使ったオイキムチ、大根を使ったカクテキは日本でも一般的。焼肉屋等でも注文できる。

他にも様々な野菜や海産物のキムチが存在する。

ポギキムチ

今回作る「ポギキムチ」も白菜のキムチだが、白菜を丸々漬け込む工程を取る。

ポギは韓国語で「塊」という意味があり、白菜を刻まずに丸ごと株のまま付けたキムチを指す。

 

最近ではカット済みのものを辛いキムチのタレ(=ヤンニョム)に漬け込んで完成させるものも多く、特に工場などの大量生産が必要な場所ではこの手法が取られる。

対して、ポギキムチは株のまま葉一枚一枚にヤンニョムを塗り付けていきキムチにしていくという手間のかかる伝統的な手法だ。

 

ポギキムチは葉が根元で繋がっているので、例えば「根元はしっかりめ」「葉先は薄いのでサラッと」とヤンニョムの濃淡を付けることが出来る。

これが重要で、刻んだ白菜をヤンニョムに漬け込むことでは出せない熟成が行える。

 

作ってみる

材料が多く手間ではあるが、完成した喜び(自己満足)も大きい。

手間過ぎて本場韓国ではキムチの作り手が減っている上に中国産の廉価なキムチに負けているらしい。

材料

  • 漬け込み野菜
    • 白菜・・・1/4株
    • 大根・・・1/4本
    • にんじん・・・1/3本
  • 塩漬け
    • 粗塩・・・25g~30g(白菜の5%くらい)
    • 粗塩・・・小さじ1
  • 本漬けのヤンニョム
    • りんご・・・1/2個
    • たまねぎ・・・1/2個
    • イカの塩辛・・・15g
    • にんにく・・・3かけ
    • 生姜・・・1かけ
  • 本漬けのノリ
    • 上新粉・・・大さじ1
    • 水・・・100ml
    • 昆布・・・5g
  • 本漬けの副食材
    • 長葱・・・1本
    • ニラ・・・1/4束
    • 干しアミエビ・・・大さじ1
    • 韓国唐辛子・・・30g
    • ガムシロップ・・・30g
    • オイスターソース・・・小さじ1
    • いりごま・・・小さじ1
    • ダシダ・・・小さじ2

手順とポイント

まずは白菜を一晩塩漬けにし、脱水。

その後、改めてヤンニョムで本漬けして完成だ。

 

ポイントとして、白菜は綺麗に洗う事、ヤンニョムが薄まらないようにしっかりと水気を無くす事。

唐辛子の量

唐辛子の量はお好みで。韓国産の粗挽き唐辛子を使うと良い。「甘口」と書いてある物を使うと、多めに入れても辛くなりすぎない。そのため大量に使って発色良く仕上げることが出来る。

今回のレシピの分量である30gで日本のキムチくらいの辛さになる。辛い物が好きなら唐辛子の分量を40gや50gに増やしても良い。

アミの塩辛とその代用

本格的に作るのならばアミの塩辛を用いるのだが、これがまた中々簡単には入手できない。

韓国系フードショップでしかお目に掛かれたことが無いため、今回はより手軽にどこでも入手できるイカの塩辛を代替とする。

アンチョビを使ったりカツオの酒盗を使うのも良い。ナンプラーでもいけるらしい。

 

今回は更に海老感の補強のため干しアミエビ(お好み焼きやたこ焼き用等で売っている小エビ)を使い、深みの補強としてオイスターソースとダシダを用いる。

ノリ

日本の漬け物では馴染みが無いが、キムチの漬け込みでは「ノリ」も大事。違う、勢いの話じゃなくて。

要はとろみを付けたいという話なので片栗粉でも小麦粉でも何でも良さそうだけど、本場では米粉由来のとろみを用いる。

というわけで今回は上新粉を使用。上新粉うるち米を乾燥させた粉、つまり米粉の一種となる。

衛生管理

衛生にも気を配る。アルコール消毒を行い、手指も器具も清潔を保つ。

キムチの寿命を長く保つためには重要だ。

 

作り方

①白菜を洗う
  • 白菜・・・1/4株

まずは白菜を丁寧に良く洗う。

今回は1/4カットの白菜が都合良く手に入ったため、このまま使用する。

1/2カットや丸々1株の白菜しかなかった場合、根本にのみ切れ込みを入れて手で割く。

全部包丁で切ると白菜の細かい欠片が発生するので、根本の固い部分にだけ包丁を入れて手で割くとこれを回避できる。

 

白菜の葉をめくりながら丁寧に汚れを落とす。虫や泥が付いている事もあるため、念入りに。

根元の葉が重なっている部分は特に丁寧に。しかしやり過ぎると葉が取れてしまったり千切れてしまうので力加減は地味に重要。

最初に溜め水でこすり、そのあと優しめの流水で流してやると良い。

 

②塩を擦り込む
  • 粗塩・・・25g~30g(白菜の5%くらい)

洗い終わった白菜の葉を一枚ずつめくりながら丁寧に粗塩を擦り込んでいく。

根本は厚め、葉先は薄めに塗るイメージ。葉先は塩辛くなりすぎてしまうので塩分の濃淡を付ける。逆に根本はしっかり柔らかくしたいのでしっかりと。

 

③塩漬けにする

塩を擦り込んだ白菜の上に重石を置き、一晩置いておく。

冬場なら冷暗所で大丈夫。湿度が高い時期、夏場などは冷蔵庫の中が安心。

 

漬け物石を使っても良いが、重石は重ければ重いほど良いという物でもなく適度な重量が大事。

僕はペットボトルの中の水量を調整しながら良い重さにしている。今回は2リットルペットボトルに水を入れて使用した。約2キロだ。

だいたい白菜重量の3倍くらいを目安とし、軽過ぎず重過ぎないように調整する。500グラムだと軽過ぎるし、5キロだと重過ぎだ。

 

④昆布出汁の準備をする
  • 水・・・100ml
  • 昆布・・・5g

昆布出汁を作る。そこまで多くの出汁は必要無いが、作りやすい分量で作って残りは他の料理に回すと良い。

水の中に昆布を入れておき、塩漬けの白菜とともに冷暗所に放置しておく。

⑤塩抜きをする

一晩置いて脱水した白菜を流水にさらし、塩抜きを行う。

 

塩漬けにした白菜は随分としんなりとしてきたが、逆に葉の色はしっかりとしてきた。

このまま漬け込むと塩味が濃くなりすぎるため、ある程度洗い流す。濃い味が好みならそこまで洗わなくても良いが、意外と味は染み込んでいるため結構洗い流しても大丈夫。

ここでまた葉一枚一枚をめくりながら汚れもチェック。

 

水洗いをしたら白菜を雑巾のようにギュッと手で絞る。

葉がちぎれたりしないように注意する。優しく、力強く。

随分と小さくなった白菜。

更にもう一度重石を置いて出番まで追い込みをかけておく。

 

⑥ノリを作る
  • 上新粉・・・大さじ1
  • 昆布を浸けておいた水(④)・・・100ml

ここからはヤンニョム作りへ移行する。

まずは昨晩から昆布を浸けておいた水を昆布ごと火にかける。60℃くらいが一番旨味が出るため、弱火でじわじわと加熱をする。

昆布を入れたまま沸騰させるとヌメリが出るため、沸騰する前に昆布を一回取り出す。80℃くらいになると昆布が浮いてくるため、そのタイミングを見計らう。なお、取り出した昆布もヤンニョムに混ぜるため、捨てないように取っておく。

その後、昆布独特の臭みを取るため、昆布の無い状態で出汁を一度沸騰させる。

 

沸騰させたら火を止め、上新粉大さじ1を入れて混ぜる。

粉気が無くなるまで混ぜ、ノリを完成させる。

粗熱を取るためコンロから外して放置しておく。

 

⑦材料を切る:そのままヤンニョムに入れるもの
  • 大根・・・1/4本
  • にんじん・・・1/3本
  • 粗塩・・・小さじ1
  • 長葱・・・1本
  • ニラ・・・1/4束
  • 出汁を取り終えた昆布(⑥)

材料は大まかに「ミキサーにかけてペーストにするもの」と「そのままヤンニョムに入れるもの」に分けられる。

ミキサーにかけてペーストにするのは、たまねぎりんご生姜にんにく

そのままヤンニョムに入れるのは、大根にんじんニラ長葱昆布となる。

 

大根とにんじんは皮を剥き、ごく細い千切りにしておく。

これらは余計な水分を脱水させておくため、軽く塩を加えて混ぜてしばらく放置しておく。

出汁を取った後の昆布も千切りにしておく。

ニラは根元を落とし、4~5cm程度に刻む。

葱も根元を落とし、斜め切りにしておく。

 

⑧材料を切る(ミキサーにかけてペーストにするもの)
  • りんご・・・1/2個
  • たまねぎ・・・1/2個
  • にんにく・・・3かけ
  • 生姜・・・1かけ

 

たまねぎ、リンゴ、生姜、にんにくはそれぞれミキサーにかけてしまうので切り方は自由。なるべく細かめの方が処理しやすいが、どうせミキサーが細かくしてくれるので爪くらいのサイズにしておけば良い。

たまねぎは皮を剥き適当にカット。リンゴは皮と芯、種を除きカット。生姜も皮を剥き、カット。にんにくも皮を剥き、一度半分にして芯を除いてから細かくカット。

芯や皮を入れる事で苦味や独特の風味を付ける作り方もあるが、今回は雑味になりそうな要素はなるべく省く。

 

⑨ペーストを作る
  • カットしたたまねぎ、りんご、生姜、にんにく(⑦)
  • イカの塩辛・・・15g
  • ガムシロップ・・・30g

さきほど切ったたまねぎ、リンゴ、生姜、にんにくをミキサーへ入れる。

ここへイカの塩辛とガムシロップも入れてスイッチオン。ペーストになるまで細かくする。

 

⑩材料を合わせる
  • 食材のペースト(⑨)
  • 塩漬けにした大根とにんじん(⑦)
  • カットしたニラ・ネギ(⑦)

ペーストをボウルに出し、塩漬けにしておいた大根とにんじんを手でギュッと絞りながら加えていく。

大根とにんじんから出た水分はヤンニョムが薄まったり分離してしまう原因になるので、しっかりと水を絞る。

ここにカットしたニラ・ネギも入れる。

 

⑩ヤンニョムにする
  • 合わせペースト(⑨)
  • ノリ(⑥)
  • 韓国唐辛子・・・30g
  • 干しアミエビ・・・大さじ1
  • オイスターソース・・・小さじ1
  • いりごま・・・小さじ1
  • ダシダ・・・小さじ2
  • カットした昆布(⑦)

唐辛子、干しアミエビ、オイスターソース、いりごま、ダシダ、ノリ、カットした昆布を入れてよく混ぜる。

これらの材料が全て馴染むまで2時間程度冷暗所で放置する。

 

⑪ヤンニョムを白菜に塗り込む
  • 塩抜きを終えた白菜(⑤)
  • ヤンニョム(⑩)

 

再び白菜の出番。よく水の切れた白菜をバット等に置き、葉を一枚一枚めくりながらヤンニョムを塗りたくっていく。

ヤンニョムは半液体のためそこまで神経質に塗り込まなくても浸透はするが、なるべく隙間やムラが出来ないように塗り込んでいく。

全ての葉に塗り終えたら、側面にも満遍なく塗る。

今回のレシピ量だとヤンニョムの量は丁度くらいとなる。

塗り終えたら手頃な容器に余ったヤンニョムとともに入れ、冷暗所で一晩漬け込んで完成だ。

 

⑫翌日

翌日、キムチを一旦取り出してカットする。

白菜の根元を落とし、白菜に対して縦に2~3本切ったのち、横に食べやすい幅(4~5cm)でカット。

 

これらは保管用の容器に戻しておく。2日後くらいが食べ頃となる。

 

食べてみる

1日後(カット時)はまだそれぞれの味がそれぞれ主張してくるような味のキムチだった。

塩漬けのちょっとキムチ味の白菜、シャキシャキで主張のある葱とニラ。にんにくも生なので尖っているし、リンゴ感も強い。ああ、リンゴが居るなと感じる。

 

2日後は徐々に打ち解けてきて「キムチ」という一つのまとまりになりつつある味わい。

まだまだ若い味だけど、これは何かと言われればまぁキムチだなという。

 

3日が経ち、市販品のような味わいに変わる。普通においしい。

4日、5日が経つ。おいしい。すっかり毎日キムチ生活だ。

 

衛生的な環境下ならば1週間くらいは余裕で食べる事が出来る。酸味やピリピリとした味わいがあるならば乳酸菌が勝っており、まだ食べる事が出来る。

腐敗臭がしてきたり変わった風味があるようならば期限はそこまで。

なお、冷凍には向かない。

 

酸味やピリピリ感が強くなってきたら煮込みや炒め物に使うと良い。

変わりゆく味わいを楽しむのもまた趣がある。