週末には、ちょっと凝ったお料理を

橋本ねこのお料理部屋( 'ω')

実は煮込むだけ、アクアパッツァを作る

 

 



アクアパッツァを作る。

名前は知っている。見た目は分かる。でも、なんだか難しそう――きっとそんなイメージを持たれていることだろう。

ところがどっこい、思いのほか簡単なのである。丸々一尾、食べたい魚が手に入ったら作ってみると良い。

アクアパッツァについて

アクアパッツァとは

アクアパッツァ、正式にはペッシェ・アッラクア・パッツァ(pesce all'acqua pazza)はイタリア料理。

タイピングするときにどのキーボードをタイプすれば良いのか一瞬ためらってしまうこちらの料理はイタリアの伝統的な海鮮料理だ。

今昔

アクアパッツァといえば、魚丸々一尾を貝類とともに豪快に煮込んだ料理として知られる。これはナポリ地方の漁師料理が起源と云われる。

だが、トスカーナ地方にもアクアパッツァと呼ばれるものがある。かつてワインを作成して領主へ献上した後、自分たちの分としてブドウの搾りかすや茎・種などを使ってワイン風の飲み物「アクアパッツァ」を作っていたという記録がある。

ナポリアクアパッツァが作られたとき、見た目の色がトスカーナアクアパッツァに似ていたことからその名前が使われ出したと言われる。

 

由来となったナポリのレシピは塩水+白ワイン+トマトだけで魚を煮込んだ物で、動物や野菜の出汁は用いない。

煮込んでいくうちにトマトが滲出し、その色がきっとワイン風飲料「アクアパッツァ」に似たのだろう。

語源

アクアパッツァは直訳すると「狂った水」「暴れる水」となる。

トスカーナでワインの代わりに作った飲み物は、さぞや気がふれた製法だったのだろう。「あいつ、ヤバいぜ!狂ってる!マンマミーヤ!これワインだぜ!」みたいになったのかも。知らんけど。

 

もしくは「魚介類を煮込むときに水(アクア)がボコボコと暴れる(パッツァ)みたいだから」とか「生きたまま魚介類を煮込むと暴れるから」とか、諸説あるようだ。

「踊り狂うほどうまい」というのもあるが、これは信じていない。

材料

歴史のある料理だけに、伝統的なレシピから現代風のレシピまで色々と存在する。

 

魚については白身魚や青魚が好まれる。クセの無い淡泊な魚が合う。

丸ごと煮込む事で骨からも出汁が出るし、もともと漁師料理という背景からしても、なるべく切り身よりも尾頭付きの丸々一尾の魚が良いだろう。

影の立役者として欠かせないのが貝類。アサリやムール貝などを入れておく。良い出汁が出る。

 

もともと海水で煮込んでいたというところより、塩も要る。

あとは白ワイン、オリーブオイル、ニンニク、そしてイタリアンパセリが欠かせない。

 

出汁の要素としては魚介類のみ。あとは塩分をコントロールして味を決めていく、シンプルな料理だ。

 

作ってみる

材料

  • 白身魚・・・1尾
  • あさり・・・8個~20個
  • ミニトマト・・・8個くらい
  • ※オリーブ・・・8個くらい
  • ※ケイパー・・・8個くらい
  • ※アンチョビ・・・2枚
  • にんにく・・・1かけ
  • イタリアンパセリ・・・1枝
  • 白ワイン・・・200cc
  • 水・・・400cc(白ワインの倍)
  • オリーブオイル(焼き用)・・・大さじ2
  • オリーブオイル(仕上げ用)・・・小さじ1
  • 塩(砂抜き、トマト、魚の下味)・・・少々
  • 胡椒・・・少々

魚は丸々一尾が良いが、取り回しが良く楽に焼けるのはもちろん切り身。

ただし、どうしてもアラの出汁感が薄れてしまうので、その点は留意。

 

※印のものは無くても良い。

アンチョビはあると味が決まりやすい。ケイパーも塩分の補強として。オリーブも塩分の補強になるし、見た目も鮮やかになる。

ただ、これらの材料をこのアクアパッツァのためだけに用意すると使いきれない人もいるだろう。適宜割愛してもらって構わない。

イタリアンパセリは頑張って探してほしい。

 

材料が揃えば煮込むだけ。

材料を揃えるのが一番手間かもしれない。

作り方

①あさりの仕込み

あさり・・・8~20個

塩・・・適量

あさりは砂抜き済みのものが楽。砂抜きしていないものを買った場合は、ボウルなどに塩水を作り、貝の砂抜きを行う。

 

貝は汚れていることがあるので、貝同士をこすり合わせて水洗いをする。

洗った貝を3%程度の濃度の塩水に入れるのだが、ボウルにザルを重ねておくと後々楽だ。貝が吐いた砂を再度吸い込んでしまう事も防げる。

バットで浸水させるときは網をかませておくと良い。

塩水の量はあさりが浸るくらい。あんまり沈めすぎると貝が酸欠になる。

 

ボウルに新聞紙かアルミホイルをかぶせて常温(15~25度程度)で放置する。暗くしてあげることで

売り物なら1時間ほどで充分だが、野生のあさりなら半日ほどを要する。前日から準備しておくと良い。

 

ドライトマトを作る

ミニトマト・・・8個くらい

塩・・・小1/3程度

トマトをオーブンでドライトマトにする。

まずはトマトを洗い、ヘタをちぎり、縦半分に切る。

トマトの断面の水分、川に残った水分はキッチンペーパーで吸い取り、なるべく水分量を減らしておく。5分ほどキッチンペーパーに触れさせて水分を吸わせておくと良い。

 

オーブンを130℃に予熱。

その間にクッキングシートを敷いた天板にトマトを並べていく。面倒かもしれないが、断面が上向きになるようにする。

並べたトマトには満遍なく塩をまぶす。脱水を早める効果があるし、下味にもなる。

予熱が終わったオーブンに入れたら60分。50分くらいからちょっとずつ様子を見ると良い。今回は完全に乾燥させる必要は無い。

 

③魚の下準備

白身魚・・・1尾

今回はアカアマダイを入手。下処理済みの物が楽だ。

捌ける方は、うろこを取り、頭を残したままエラを取り、内臓や血合いを除く。

水洗いをした場合はキッチンペーパーなどで水気を切っておく。

 

④材料の仕込み

にんにく・・・1かけ

下処理済みの魚(③)

にんにくをみじん切りにする。芯が嫌いな人は先に縦に割り、芯を除いてからみじん切りにすると良い。

先ほどの魚には塩胡椒を。裏表満遍なく振っておきたい。塩気のある材料が少なければ、お腹の中にも塗っておくと良い塩分の補強になる。

魚に×印の切れ込みを入れても良い。皮の縮みを防止したりする効果もある。今回はちょっと×印が入ると一気に和食のような見た目になってしまうので敢えて入れなかった。

 

⑤魚を焼く

仕込み済みの魚(④)

オリーブオイル(表面)・・・大1

オリーブオイル(裏面)・・・大1

いよいよ本調理。

フライパンで焼くのだが、魚がくっ付いてしまうと悲惨。ひっくり返すときにボロボロになってしまってはアクアパッツァの見た目としては0点だ。

 

ここで登場するのがクッキングシート

まずは片面をクッキングシートの上で焼き、焼けたらそのままクッキングシートをテーブルクロス引きの要領で外し、ゴロンとフライパンの上に裏返しになるように魚を転がす。

これで魚がくっつくリスク、そしてひっくり返すときに身がボロボロになるリスクを低減できる。アクアパッツァの失敗原因にもなるこの2点は、どうにか回避したい。

 

まずは魚一尾が入るサイズのフライパンに折り目を付けたクッキングシートを敷く。そのままクッキングシートの上にオリーブオイルを大さじ1入れる。

フライパンからクッキングシートがはみ出てしまうと引火するので注意。

火を点け、クッキングシートの上にオリーブオイルを塗り広げるようにして行き渡らせておく。特に一尾丸々焼くので隅々まで満遍なく。

 

充分に熱したら、最後に表にしたい面を先に焼いていく。

焼き魚全般に共通して言えるが、先に焼いた面の方がひっくり返して後から焼く面よりもきれいに仕上がりやすい。なので、「先に焼く面=盛り付けたい面」となる。

 

というわけで最初に置く向きはこんな感じ。

にんにくも入れても良いが、焦げやすいためこの段階で入れるのはオススメしない。

 

だいたい中火で3分くらいで頃合い。大きさにもよるが、3分くらいで様子を見ると良い。今回はアクアパッツァにするので、ここで火を通しきる必要は無い。

あくまで焼き色が付けばOKという具合で。

 

クッキングシートを引き抜きながら、ゴロンと転がすようにしてフライパンへ。

クッキングシートを引き抜ききる前に、追加でオリーブオイルを大さじ1入れておく。

良い焼き色。

こちらもこのまま3分ほど加熱する。

 

⑥食材たちを入れる

みじん切りにしたにんにく(④)

アンチョビ・・・2枚

ケイパー・・・8個くらい

オリーブ・・・8個くらい

ドライトマト(②)

魚が両面焼けたらシーズニングとなるものを入れていく。

まずはみじん切りにしたにんにくアンチョビを入れる。

アンチョビは加熱しながらヘラで潰して細かくしておく。フライパンの上で作業するとまな板に匂いが付かなくて良い。

その後、ケイパーオリーブトマトを加える。

 

⑦貝類と白ワイン、水を入れる

砂抜きした貝類(①)

白ワイン・・・200ml

水・・・400ml

先ほどの材料は別に炒めるわけではないため、フライパンの上で適度に温まったらOK。

続いて貝類を入れ、強火にして白ワインを入れる。ある程度アルコール臭がしなくなったらも入れる。

白ワインと水の比率は1:2。今回は白ワイン200ml、水400mlとした。これくらいでほぼ魚が浸った。1:2で魚が浸る分量を探ると良い。

今回、魚の尾周辺があんまりしっかり焼けなかったので、煮込む段階でじっくり加熱していきたい。

 

⑧煮込む

魚が焦げ付かないように、たまにフライパンをゆすったりする。無理に動かすと魚がほぐれてしまうので注意。

貝の口が開ききったら中火にする。あとはお好みの煮込み加減で。煮詰めすぎると出汁が辛くなりすぎるので、味見をしながら。

今回はだいたい15分~20分程度だっただろうか。

 

⑨仕上げ

イタリアンパセリ・・・1枝

オリーブオイル・・・小1

煮込み終わったら、豪快にフライパンごと食卓に出してしまおう。

上からイタリアンパセリを粗みじん切りにして散らす。面倒なら手で揉みちぎりながら散らす。茎の部分は入れなくても良い。

無理に手に入らなければパセリでも良いんだけど、僕は出来れば探してイタリアンパセリを入れたい派。

最後に追いオリーブオイルで仕上げ。小さじ1程度を掛けると、香りが華やかになる。

 

食べてみる

動物性・植物性の出汁ってすんごい手間が掛かるイメージなんだけど、それに比べると魚介ってすさまじい。昆布や鰹節もそうだけど、こういった魚介類って結構お手軽に強い味が引き出せる。

このアクアパッツァも貝と魚の旨みが爆弾のようにぶちこまれている。スープが濃厚。まぁアンチョビというチートアイテムは使ったけど、それを差し引いてもすごい威力。

 

ちょっと下準備は手間ではあったけど、でもその甲斐のあるおいしさ。

これだけシンプルな材料でこの旨さ。これぞイタリア料理って感じがする。

 

魚を丸々一尾使うので見た目も良く、ごちそう感もある。

煮込み始めれば付きっ切りではなく他の料理も並行して作れるし、手間なのは仕込みだけ。

 

残った出汁にはバゲットをつけても良いし、パスタを絡めてもボンゴレビアンコっぽくなっておいしいと思う。

もちろんワインにもぴったり。アクアパッツァ、作ってみたら最高の一皿だった。