週末には、ちょっと凝ったお料理を

橋本ねこのお料理部屋( 'ω')

黒毛和牛を使わなくても専門店に勝てる「肉汁溢れるハンバーグ」

 

「何か食べたい料理ある?」

「そうだなぁ、ハンバーグとか食べたいな」

「オッケー、作るよ」

って言えるの、カッコいいな。カッコよくない?

 

世の中には「家庭料理の顔をしているくせに作るのが面倒な料理」というものが少なからず存在する。

不動の一位はコロッケだとして、ハンバーグも中々面倒な料理としてランクインするのではないか。

 

今回はそんなハンバーグを作る世のお父様お母様への敬意を表すため、ハンバーグを作ってみようと思う。

せっかくなので、肉汁をたんまりと含ませて仕上げ、洋食屋で出てきそうなクオリティを目指す。

 

良い材料を使えばおいしくなるのは当たり前なので、材料はスーパーで購入できるような至って普通のものばかりとした。

そりゃあ黒毛和牛を入れれば脂マシマシ旨味マシのハンバーグになるに決まっている。でもそんな札束でぶん殴るようなハンバーグじゃなく、あくまで家庭に寄り添った激ウマハンバーグが良いんだ。

 

 

作ってみる

材料(4人前)

  • 牛豚合い挽き肉 500g
  • 玉ねぎ 100g
  • バター 10g
  • 油(成形用) 大1/2
  • 油(焼く用) 大1
  • 卵 M2個
  • 塩 6.5g
  • 砂糖 小1/2
  • ナツメグ 5g
  • 胡椒 少々
  • おろしにんにく 少々
  • 粉ゼラチン 小3
  • 牛脂 1個
  • 生パン粉 50g
  • 牛乳 50ml
  • ソース用

 

作り方

①玉ねぎの下準備

まずは玉ねぎ100gをみじん切り。フライパンにバター10gを熱し、みじん切りにした玉ねぎのうちの半分である50gを炒める。塩も少々入れておく。(分量外)

今回は炒めた玉ねぎと生玉ねぎのハイブリッドで作る。炒めた玉ねぎは旨みや甘みが増すし、生の玉ねぎは食感が活きる。それぞれの良い所を活かしていこうと思う。

良い感じのブラウンカラーになったら粗熱を取る。余裕があったら冷蔵庫で冷やす。

残りの生玉ねぎも冷蔵庫で冷やしておく。

 

②生パン粉、牛脂の準備

生パン粉50g牛乳50mlを合わせておく。

しっかり牛乳を吸わせておくためだが、長時間吸わせる必要は無い。

牛乳を入れて生パン粉全体がしっとりしたら、冷蔵庫へ。

 

牛脂は合い挽き肉と一緒にスーパーで頂けるものを使用する。こちらは肉だねに混ぜ込むため、細かく刻んでおく。牛脂はどんどん溶けてしまうため、手早く。

こちらも出番まで冷蔵庫へ入れておく。

 

③肉だねを作る

氷水を入れたボウルの上にボウルを重ね、その上で肉だねを作る。

肉だねの温度を上げない事はとても重要。温度が上がれば脂は溶け出していき、それはイコール旨みの流出を意味する。なので玉ねぎの粗熱もしっかりと取りたいのだ。

手の熱が伝わるのを防ぐため、手も冷やしておきたいくらい。そして作業は手早く行う。

冷凍庫のスペースさえ許せば、予めボウルごと冷凍庫で冷やしておくのがオススメ。

 

まずはボウルに合挽肉をスタンバイ。

塩6.5gを入れて混ぜ合わせる。塩を加えると肉から粘りが生まれる。これにより肉だねにまとまりが生まれ、肉汁が出づらくなる。

この時、他の材料も一度に入れてしまうと塩の効果が薄まってしまう。今回はまずは塩だけを馴染ませて十分に塩の恩恵を受けたのちに他の材料を入れる手法を取る。

 

充分に粘りが出てきたら、砂糖小1/2ナツメグ5g胡椒少々おろしにんにく少々、①の生たまねぎ50g卵2個、②の刻んだ牛脂1個分粉ゼラチン小3を入れて混ぜる。

馴染んだら、②の牛乳に浸しておいた生パン粉を混ぜる。馴染ませたのち、①の炒めた玉ねぎ50gを入れて、よく捏ねる。

 

④肉だねを成形する

良い感じに捏ね終えたら、今度は例のあの形に成形する。小判型というか、楕円型というか。今回は4分割にする。

この時、手にサラダ油を馴染ませておくと良い。ハンバーグの表面をオイルコーティングすることで、表面を滑らかにして肉汁を閉じ込める狙いがある。

 

肉だねが分厚過ぎると火の通りが悪くなる。ラグビーボールのような形ではなく、横から見た時に平たい方が調理はしやすい。

良い感じの楕円形になったら表面を整える。この時に肉だねがボコボコしていると焼いて膨らんだときに割れたり崩れたりする。

 

このあと、手から手へ小気味よくキャッチボールをするようにして空気を抜く。だいたい15回~20回くらいか。やり過ぎも良くない。

ハンバーグといえばこの工程がお馴染みだが、もちろん避けて通れないほど重要な工程だ。この時にしっかり空気を抜かないと、加熱したときに空気が膨張してしまい、これまたひび割れの原因となる。

 

最後に中央を指で押してへこませたら完成。

中心部は加熱したときにどうせ膨らむので、先にちょっと潰しておくのだ。

僕はこの状態を赤血球みたいな形だなって思っているのだけど、まぁこれは伝わる人にだけ伝われば良い話。

 

ここで付け合わせが必要ならば先に調理しておく。

その場合、肉だねはバットなどに乗せて冷蔵しておくこと。

 

⑤焼く

いよいよ焼いていく。焼く際には強火は使わない。中火で火入れをして、弱火でじわじわ。これが鉄則である。

 

サイズ的にも2個ずつ調理する事になるだろう。

フライパンにサラダ油大1/2を中火で熱し、充分に熱くなったら肉だねを2つ置く。

フライパンに置く際に形が崩れやすいため、最終調整はここで行う。ちょっと押さえたりして形を整えておく。

肉だねを置いたら中火よりほんの少し弱いくらいで3分ほどの火入れ。

 

良い感じに焼き色が付いたら裏返す。

裏返したら弱火に落とし、フライパンに50ml程度の水を入れてすぐ蓋をして、10分蒸し焼きにする。

その後火を止めて、蓋をしたまま2分放置して余熱で蒸す。

 

出来上がったら竹串を通し、肉汁が透明ならば完成。

もし肉汁が白濁している場合は、追加で弱火1分の加熱を行う。

同様にあと2個も焼くが、その前にフライパンの油の量を調整する。

今回のレシピ通りに作っていたら、フライパンの油は必要以上に残っている。

こちらを一旦キッチンペーパーで拭ってから調理を行う。

 

⑥ソース作り

ソースはケチャップやウスターソースを使って洋食レストランのデミグラスソースっぽく仕立てる。醤油を少量使うのがポイント。今回は入れていないが、砂糖を少し入れても良い。

 

フライパンに残った油にはハンバーグの旨みも移っているため、これをこのまま用いる。

この時、油が残り過ぎていたらちょっと取り除く。今回のように脂がダクダクのハンバーグを作っていると、フライパンは脂塗れである。また、焦げが固まっていると香りが香ばしくなりすぎるので、取り除ける範囲で取っておく。

 

フライパンに残った油に赤ワイン大1を入れて加熱。充分にアルコールを飛ばす。

その後ケチャップ大2ウスターソース大2醤油小1を加え、馴染んでとろみがついたら完成だ。

 

ポイントとこだわり

1.材料はとにかく冷やす

肉だねをはじめとした材料は全て冷たい状態で作りたい。全てを冷蔵庫へ入れておきたいし、巨大な冷蔵庫があるご家庭はぜひその中で作業を進めてほしいが、一般的なご家庭には無いので、とにかく冷やす事を考える。

ただし冷凍すると品質が変わったり固まって混ぜにくくなるものもあるので、やりすぎ注意。

 

2.肉汁を逃さない

肉汁を逃さないため、型崩れを起こさないように手早く綺麗に成形する必要がある。表面を滑らかにしておくように。レシピにあったように油を使った表面コーティングも有効だ。

肉汁を逃さないためのゼラチンと、肉汁を増やすための牛脂もポイントとなる。それぞれが無くても充分おいしいハンバーグにはなるが、ぜひ入れておきたい。

 

3.焼き目を付けて、弱火で蒸す

ハンバーグの調理で強火は使わない事。外だけ焦げてしまい、中が生っぽくなってしまう。豚肉も入っているので、しっかり中まで火を通したい。

まずは中火~中弱火くらいで片面に焼き目を付けたら、裏返して弱火で蒸し焼き。じっくりと火を通していくのがセオリーとなる。

 

4.肉の配合に拘る

今回は二種類の粗さの合い挽きを使用。

粗めの合い挽きを300g、細かめの合い挽きを200gにした。

どちらもスーパーにて。粗めのものはスーパー内の精肉店にて。細かめのものはパック売りされているものだ。

粗めなら食感が活きる。細かめは食感が滑らかになる。今回は両方を入れて食感にメリハリを出した。

 

食べてみる


それでは実食。

本日のイメージは洋食屋で出てくるハンバーグだ。

付け合わせやスープも何となく洋食屋っぽくした。

 

ハンバーグは良い焼き目が付いており、見た目は完璧である。

こんなことを言っては本職の人に怒られたり笑われたりするだろうが、我ながらお店で出てきそうな出来映えである。

ハンバーグの中身

しかし、ことハンバーグに於いて、外見とともに中身も重要である。

ハンバーグを割ったら残念、という事は実際プロでもあり得る。

 

緊張の一瞬。

動画じゃないので上手く伝わるか分からないが、断面の色々な所が光っているのが分かるだろうか。肉の間からどんどん肉汁が迸ってくる。

 

味は良い意味で手作り感がある。

無骨だが、その味わいはストレート。素直に美味しいと思える。

コンビニの惣菜やファミレスで食べられるものは安定的であり間違いなく美味しいが、ここまでのサプライズは無い。冷蔵品や冷凍品では食べられない味である。

この点では、もう既にこれはお店で味わえるような味と言える。

 

とはいえ、牛100%のお店のあのジューシー感とはまた一線を画す。

牛100%はどうしても少しレアに仕上げる事が出来るというメリットがあるため、「肉を食べている感」の演出に長ける。

一方で、合い挽き肉に使用される豚肉を生焼け状態で喫食する事はオススメ出来ない。それゆえウェルダンで供するしかないのだ。

 

このハンディキャップの中、粉ゼラチンと牛脂を内部に忍ばせることで肉汁の演出を行った。

まぁズルと言えばズルだが、この程度の添加物でそんなことを言っては外食なんて出来たものではなくなってしまうので、ご愛敬。

ちょっとしたテクニックでジューシーなハンバーグが出来るんだ、と解釈してほしい。

 

ハンバーグのソース

上に掛かっている洋食屋っぽいソースもポイント高い。

今回のケチャップとソースと赤ワインを使ったレシピは「デミグラスソースの代用」と呼ばれることもある配合である。

こちらの洋食屋の謎ソースはあまりに頻繁に用いられるため、これをデミグラスソースだと思っている人もいるくらいだろう。

今回のように動物性の油の残ったフライパンでケチャップやソースを赤ワインで煮立たせると「デミグラスソースに近い何か」が出来るのである。実は実際近いと言えばまぁ近い。

 

デミグラスソースは牛肉と香味野菜を煮込んだソース。ケチャップやソースにも香味野菜はふんだんに使われているので、あとは牛のエキスが入れば結構近付く。なので、今回のようにハンバーグ作成後のフライパンでソースを作れば、デミグラスっぽくはなるのである。

とはいえ、あくまでも「なんちゃってデミグラス」だという事は改めて書き付けておく。

この謎ソースがまたハンバーグに良く合うんだなぁ。本物のデミグラスよりもこっちの方が個人的にはハンバーグに合うと思っている。

 

ハンバーグの保存方法

なお、ハンバーグはまとめて作って凍らせておくことも出来る。

タネのままで保管をするよりも作成してしまってから保管をする方が良い。

タネのままだと冷蔵では生肉と同じくらいの消費期限となる。かつ、形が崩れたり中身が分離したりとあまり良い事は無い。冷凍すればある程度の保存は効くが、火入れの難易度が高くなる。まずはしっかり解凍しないと焼きムラの原因になったりする恐れがあるからだ。

 

一方で作成後なら冷凍も簡単だ。一見品質は下がりそうだが――まぁ冷凍する時点である程度の劣化は逃れられないが――そこまで大きな劣化は無い。

また次の食事で食べるのならば冷蔵、数日後とかに食べるなら冷凍、と使い分けると良い。

 

あとがき

作ってみて、ハンバーグは決して手軽な料理では無いと改めて感じた。2時間程度で出来るのだが、冷凍食品やコンビニのレンチン惣菜でも身近な存在であるため面倒に感じてしまう。

でもこの手間暇をかけてこれだけの満足度があるならば、また作っても良いなと思える。