すっかり寒くなってきた。
寒くなってきたら、やっぱり暖かい飲みものが一番。というわけで、今回は「グリューワイン」というものを作る。
ここ数年で日本でもクリスマスマーケット*1が開催されるようになってきており、そこでも取り扱われることが多い。そのため、グリューワインを知っている人、そして飲んだことがある人もいるだろう。
ホットドリンク繋がりで、以前作ったチャイのレシピはこちら。こちらも暖まる。
グリューワインについて
グリューワインとは
グリューワイン(Glühwein)はドイツ語。
色々なスパイスの入った、暖かいワインだ。
ドイツでは12月頃、クリスマスマーケットのワゴンで供される。もしくは各家庭でも作る。
スパイスの効果で体を温めてくれる。もちろんアルコール入りなので子供は飲めない。
日本では分かりやすくホットワインと呼ばれている。
ホットワインというのは和製英語で、英語では「mulled wine(マルドワイン)」と言う。
"mull"という単語には「じっくり考える」という意味がある。ニュアンスとしてはディープな思考と言うよりも、ある程度の時間を取ってゆっくりと思いを巡らせるようなイメージだ。
そこから転じたのか、それともむしろこちらが語源なのかは定かではないが、"mull"には「酒に香料や砂糖などを入れて温める」という意味もある。
よく思いを巡らせるように、色々な香料やスパイス、そして材料を溶かし込んで温めたお酒。その完成品はきっとある一種の答えを導き出す事だろう。知らんけど。
まぁしかし日本ではこの"mull"という単語がそこまで浸透していない。
そのため、分かりやすくするために一発で意味が想像出来る「ホットワイン」という言葉が使われる。
ホットワインは英語圏でも通じそうだけど、"mulled"のように色々加えておらず、ただ単に温めただけのワインだと認識されてしまう点に注意したい。
さて、グリューワインのグリュー(Glüh)には「赤々と燃える」「熱を帯びる」という意味がある。
そのため、伝統的には赤ワインで作られる。しかし別に白ワインが好みならば白ワインで作っても良い。
ここまでで触れた通り、グリューワインはただワインを温めるだけのものではない。
体が温まりそうなスパイスを入れたり身近なフルーツを入れたり。家庭で作られるものなので、それぞれ味わいや甘さも異なる。
テイストとしてはサングリアに近い。ルーツが異なるが、結果となる完成品は温度以外似ている。
グリューワイン向けのワイン
グリューワインを作る上で向いているワインとは何だろうか。
トラディショナルには赤ワインだが、別にロゼや白ワインを使っても誰かに怒られたりするわけではない。
今どき、タンドール釜で焼かないタンドリーチキンだって存在するし、家庭での調理に於いて兎や角議論をすることにそう意味は無いだろう。
それを言うならば、サングリアも語源はスペイン語の「血(Sangre)」だ。だから白ワインのサングリアは存在しないことになってしまう。
というわけで何でも良いのだが、スパイス等を入れて味を調整するので、安いワインでも全く問題無い。
むしろ、ちょっと飲み頃を過ぎてしまったり、余ってしまったワインをおいしく飲み切るのにピッタリのレシピとも言える。
僕は色々なワインを気分に応じて飲むので、しばしば中途半端な余りが発生する。ちょっと奥の方から忘れ去られたワインを発見してしまったりね…。そういったワインたちを最後までおいしく成仏させるため、このグリューワインは大活躍するのだ。
ちょっと面倒臭い話
日本国内で作るとき、作り置きはしないようにしてほしい。
また、このレシピは作り置きを推奨するものでは無い。飲む直前に飲める量だけ作成し、その場ですぐさま個人的消費を行う意図で載せていることを先に書いておく。
察しの良い人、そして自宅で果実酒を作ったことがある人は、もうピンときたかもしれない。そう、法的な話だ。
日本国内では度数の低いお酒に何かしらの材料を加えて新たな名義の酒にすることは「酒を作っている」と見做される。酒を作って良いのは許可を受けた業者のみ。ただ、カクテルのようにその場ですぐに消費するものは対象外となる。
たまにサングリアの作り方のレシピを見かけるが、あれは日本国内では個人消費であっても作成は出来ない。
詳しくは3年前に書いたこちらの記事を参照されたし。
また、さらに興味があれば各自検索するなどして調べてほしい。
作ってみる
材料(ハーフボトル分)
- 赤ワイン・・・375ml
- あとはお好み
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- 胡椒(ホール)・・・2粒
- ナツメグ(パウダー)・・・1振り
- ジンジャーパウダー・・・1振り
クリスマスらしさを感じるのは、シナモンにジンジャー(生姜)あたりか。
ナツメグも良いし、胡椒も体を温めるので加えても良い。
こちらのレシピははちみつと砂糖を大さじ1ずつ。
これだとスパイスを引き立ててワインを飲みやすくするくらいの効果で、そこまで甘味を強烈に感じるほどではない。
もっと甘めが良ければ倍量くらいにしても良いかもしれない。あとからそれぞれのグラスに入れても良い。
果物は何でも良いが、柑橘類が最低1種類は欲しい。
オレンジでもレモンでも良い。なお、白ワインだとレモンが合う。
作り方
作り方は簡単、全部火にかけるだけだ。
ただし入れる順番に拘る事で、よりおいしくする事も出来る。
①仕込み
オレンジ・・・5切れ(1切れは飾り用)
りんご・・・100g(3/8個)
生姜・・・2切れ
シナモン(スティック)・・・1本
クローブ(ホール)・・・2粒
スターアニス(ホール)・・・1個
まずは果物をカット。
柑橘類は果皮も使いたいので、よく洗う。多少面倒だがワックス取りの工程を踏むと尚良い。
生姜は皮付きでも良いが、個人的には苦みとエグみが相応しくないと考えるので、皮は取り除いてスライスする。もちろんもっとお手軽にジンジャーパウダーでも良い。
スパイスは折ったり砕いたりすることで、より個性を出せる。ただ、強すぎるスパイスは飲みにくさにもつながる。例えばシナモンは折ってから加える事でよりシナモンを強調できる。
クローブもホールではなくパウダーを使う事でよりアクセントになる。
この辺は好みに応じて。足す事は出来るが、引く事は出来ない点に留意。
②ワインを加熱する
赤ワイン・・・375ml
はちみつ・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ1
まずはワインを手頃な手鍋へ入れる。
ここに砂糖やはちみつも入れる。砂糖やはちみつは加熱しながら掻き混ぜて溶かしていく。
りんご等のエグみの出ないフルーツも先に入れても良い。柑橘類はなるべく最後に入れる。
スパイスもこの最初のタイミングで一緒に入れ、じわじわと引き立たせていく。
このように、ホールのクローブはりんごにぶっ刺しておく。
クローブは一粒が結構小さく迷子になりやすいので、こうすることでワインを飲むときに口の中でクローブを噛み潰して不快な思いをする事は無い。
取り除きたくなった時も非常に楽だ。
沸騰させすぎてしまうとスパイスからエグみがでるので注意。鍋肌に泡が付くか付かないか、くらいをキープし続けられるような火加減で。
逆にアルコール分を飛ばして飲みやすくしたいのなら、スパイスや糖類を入れる前に一度ワイン単体で加熱すると良いかもしれない。
ただ、アルコール分があった方が体は温まる気がする。
③柑橘類を加える
ある程度の加熱が終わったら、柑橘類を加える。今回は見栄えを考えてスライスにしたが、果汁を出す目的ならくし切りにして潰しながら入れるのが良い。
柑橘類のエキスが出た方が飲みやすくなる。果実の代わりに100%のオレンジジュースを少量使っても良いかもしれない。
しばらくの間ゆるゆると加熱し、味が馴染んで来たら完成。
今回は最初の加熱が10分ほど、柑橘類を加えてからは5分ほど加熱した。
柑橘類を入れた後はあまり加熱すると皮から独特の苦みとエグみが出るため、注意。
飲んでみる
飲んでみると直ちに体がポカポカする。
アルコールを温めると揮発して鼻に刺激が来やすい。アルコールに強くない人は注意されたい。
体を温める成分が多く入っているため、間違いなく温まる。というか暖まり過ぎるくらい。
さすがヨーロッパの冬の飲み物。
ドイツやフランスのクリスマスシーズンは平均気温が5℃ほどしかない。
パリは北海道並みの緯度に位置し、ドイツも北海道並みに寒い。そんな国で冬を乗り越えるための知恵だったのだろう。爆裂に効果的だ。
寒くてどうにもならないとき、そして抜栓したワインが溜まってきたとき、このグリューワインを作ってみてほしい。
*1:ドイツ発祥、クリスマスシーズンに開催される広場でのイベント。日本で言う縁日のように様々なお店・屋台が広場に並び、クリスマス気分を盛り上げる。