ビーフシチューもたまにはイチから作ってみると滋味深くおいしい。
気軽に作れる料理じゃないけど「よし、作るか」と作るのも一興。
かけた時間も味の一部になる感覚。
休みの日、特別な日に作ると良い。クリスマスにも良いかも。
材料(4皿分)
- ミルポワ
- セロリ・・・1本
- にんじん・・・1本
- たまねぎ・・・1玉
- にんにく・・・2片
- パセリ・・・5gくらい
- サラダ油・・・大さじ1
- 塩・・・適量
- 水・・・500ml
- フォン
- 牛肉(すね肉など)・・・600g
- 塩・胡椒・・・適量
- 小麦粉・・・大さじ2
- サラダ油・・・大さじ1
- 水・・・1600ml
- ローリエ・・・1枚
- トマトペースト
- トマト水煮・・・1缶
- 砂糖・・・大さじ1
- ブラウンルゥ
- バター・・・50g
- 小麦粉・・・50g
- 赤ワイン・・・200ml
- 塩・胡椒・・・適量
- 具材
- にんじん・・・1本
- じゃがいも・・・2個
- たまねぎ・・・1玉
- バター・・・5g
- 塩・・・適量
ポイント
4つのベースを作って、合わせる
香味野菜を炒めたミルポワ、牛と野菜から旨みを取ったフォン、トマトを煮詰めたトマトペースト、小麦粉とバターを熱したブラウンルゥの4つのベースを作りをし、それらを一つにまとめることでデミグラスソースとなり、ビーフシチューが完成する。
色を付けるべきもの、焦がしちゃダメなもの
香味野菜を炒める、ブラウンルゥを作る、といった工程はしっかりと炒めて色付けをする。
逆にトマトペーストやフォンは濁りが無いように仕上げていく必要がある。焦げが入ると一気に苦味が増すので、丁寧に作っていきたい。
寝かせて、馴染ませる
4つのベースを合わせてデミグラスソースが完成したら、そのまま一晩寝かせて味を馴染ませる。
混ぜたてはそれぞれが主張し合って味が馴染まず、どこか角張った味になる。一晩寝かすことでじっくりと打ち解けてくれる。
作り方
①ミルポワを作る
- セロリ・・・1本
- にんじん・・・1本
- たまねぎ・・・1玉
- にんにく・・・2片
- パセリ・・・5gくらい
- サラダ油・・・大さじ1
- 水・・・500ml
まずはミルポワ作り。刻んだ香味野菜を長時間炒めたものとなる。
今回は香味野菜としてセロリ1本、にんじん1本、たまねぎ1玉、にんにく2片、パセリを使う。
パセリは好み次第。個人的には入れたい。入れるなら乾燥パセリじゃなくて生で。
今回はこれらの香味野菜の皮や本来不要な部分も余さず使うため、まずはよく洗う。
たまねぎの最外皮などのどうしようもない部分は捨てる。
不要な部分は鍋に集めておく。
にんじんの皮と落とした上下の部分、たまねぎの皮、セロリの葉の部分、パセリの茎の部分などなど。
にんにくの皮と上下も落としたが、サイズが細かいので今回は不使用。
この野菜くずを入れた鍋はフォン作りまで一旦置いておく。
あとはにんじん、たまねぎ、セロリ、にんにくはすべて細かめのみじん切り。パセリも叩くように切り、細かくしておく。
フライパンにサラダ油大さじ1を熱し、刻んだ野菜をじっくりと炒めていく。
中火寄りの弱火。
ここで塩を振っておく。下味の効果もあるけど、野菜の脱水を促進させるので早く飴色になる気がする。
「早く」とは言ったが、かれこれ12分くらい炒めただろうか。
炒め具合は時間よりも音で判断すると良い。
シューシューと水分が抜けていく音がチリチリとした音に変わったらいよいよ水分が無くなり焦げる手前。
ここで焦がすと無駄な苦味と色の濁りが付いてしまうため、焦がさない。焦がすくらいなら炒め具合が甘い方が良いかもしれない。
炒め終わったら鍋へ移す。野菜くずの鍋とは別の鍋だ。
最終的にこのミルポワの鍋でビーフシチューとして完成させるので、ゆとりのあるサイズが良い。
ここに水500mlを入れ、蓋をして弱火で2時間煮込んだらミルポワの完成だ。
ボコボコと沸騰させないようにし、たまに鍋をかき混ぜる。
水分が無くなりそうだったら追加して、焦がさないようにする。
2時間煮込んでいる間にブラウンルゥの工程まで進めておくと良い。
なお、2時間煮込んだ後はこんな感じ。
より口当たりよく「具材が溶け込んだ」感じにするならばこれらをミキサーにかけると良い。
今回はこのまま使用する。
②フォンを作る
- 牛肉(すね肉など)・・・600g
- 塩・胡椒・・・適量
- 小麦粉・・・大さじ2
- サラダ油・・・大さじ1
- 水・・・1600ml
- ローリエ・・・1枚
続いてフォンを作る。要は牛肉と野菜で作る出汁である。
まずは牛肉。
牛肉を選ぶ際、良い牛肉を使う必要は無い。"良い牛肉"の定義が難しいが、サシが多い柔らかい肉は煮込みに不向きなので、むしろ安めの硬そうな肉が良い。良いダシも出る。
牛肉はだいたい600gくらいを用意する。
これらをやや大きめにゴロッと切っていく。
塩、胡椒をまぶし、全体に馴染ませる。
同様に小麦粉大さじ2も馴染ませる。全体に行き渡るギリギリの量である。
小麦粉はお肉の縮みの防止だったりの意味合いがあると思う。洋食店によっては最初から最後まで小麦粉一切無しの作り方もあるが、小麦粉を入れた方が成功率は高い気がする。
フライパンにサラダ油を熱し、中火にする。
牛肉を転がしながら焼き色を各面に付ける。
焼き色をしっかり付けるのが成功のカギ。ただし焦がしたくはない。
焼き色が付いたら、野菜くずを入れた鍋へと移していく。
使ったフライパンに残った肉の旨みも逃さず入れるため、フライパンに水200mlを注いで加熱し、旨みをこそげ取る。これらも鍋へ入れる。
さらに鍋に水900mlを入れ、ローリエ1枚と塩を入れる。
まずは強火にかけ、沸かす。
沸いてくると信じられないほどの量のアクが出てくるため、すべて取り除く。澄んだ琥珀色のフォンにするために必須だ。
なお、ボコボコと沸騰させる事でアクが集まってくれるため、非常に取りやすくなる。
ただし、沸騰状態を長く続けないように手早くアクは取り去りたい。
アクを取り終えたら火を弱火に落とし、4時間煮込む。フタはせずに煮詰めていくが、煮詰まり過ぎないように途中で500mlの水を継ぎ足す。
4時間煮込んでいる間にブラウンルゥの完成まで進めておくと良い。
なお、4時間煮込むとこんな感じになる。
濁りの無い、澄んだ琥珀色になっていれば成功。この時点で既にスープとして十分おいしいはず。味を見て塩加減をチェックしておく。
完成したフォンは漉しておく。牛肉は取り出すが、野菜くずはここでお別れだ。
牛肉は粗熱を取り、冷蔵庫へ。牛肉の次の出番は翌日となる。
③トマトペーストを作る
- トマト水煮・・・1缶
- 砂糖・・・大さじ1
続いてトマトペーストを作る。
水煮缶やパックの物を使って水分を飛ばしてペースト状にする。
水煮はどれでも良いが、成分を見て"調味されていないもの"を選ぶ。ここで塩やその他調味料が入っていると、仕上がりの味わいが変わってしまう。
また、トマトの皮は除去されているものがほとんどだと思われるが、一応チェック。皮が残ると口当たりが悪くなる。
トマト1缶分、そこに砂糖大さじ1を入れて中火にかける。
最初は広げながら水分を飛ばすように混ぜ、途中からは中心底部が加熱され過ぎないように練っていくイメージ。焦げにくいが、絶対焦がさないように。
これくらい水分が飛べばOK。
④ブラウンルゥを作る
- バター・・・50g
- 小麦粉・・・50g
ブラウンルゥを作っていく。
簡単に言えば熱した油と小麦粉を練ったもの。色付けにも一役買う。
今回はバターと小麦粉を同量で作っていく。
作る前に、濡れ布巾を用意しておく。ルゥに火が入り過ぎないように冷やしたいときに使う。
まずはバター50gを小鍋で溶かす。
溶けたら小麦粉50g。
あとは弱火でひたすら練っていく。
ちなみにこの色くらいで牛乳を入れて練って調味すればベシャメルソースとなる。
今回はしっかりとしたブラウンカラーにしていくので、まだまだじっくりと火を通していく。
そう、粉に火を入れるようなイメージで混ぜ続けると良いかもしれない。
最初はあまり色付かないが、ある一定のところから急に色が濃くなりだす。
焦がしてしまうと苦みが一気に増える。絶対焦がさないように、弱火で慎重に。
たまに火から降ろし、濡れ布巾の上に置き、なべ底を冷やして焦げないようにする。
もっと色を付けても良いが、焦げるくらいならこれくらいでストップ。
ここまでだいたい12分くらい。
お目当ての色味になったら、粗熱を取っておく。粗熱を取らないとどんどん火が入っていき色も変わっていく。
⑤デミグラスソースを完成させる
- ミルポワ(①)
- フォン(②)
- トマトペースト(③)
- ブラウンルゥ(④)
- 赤ワイン・・・150ml
これで4つのベースが揃ったので、これらを混ぜ合わせていく。
まずはミルポワとトマトペースト、赤ワイン150mlを合わせる。
この状態で火にかけて、温める。
ここにフォンを入れ、ブラウンルゥも入れる。
全て全量入れてしまってOKだが、フォンはちょっと残しておいてトロみを見ながら微調整しても良い。
弱火で混ぜながら20分ほど加熱していく。途中でアクがでるので取り除く。
アクを取り終えるころにはすっかり赤ワインのアルコール臭を感じなくなり、ソースに一体感が出てくる。
ここに塩胡椒を入れて調味。それぞれの素材がまだ馴染みきっていないが、おいしいと感じるくらいまでの味にはする。8割方決めるつもりで。
明日もう少し煮詰めるので、味を濃くし過ぎないように。
20分加熱し終えたら粗熱を取り、冷蔵庫で一晩寝かせる。
⑥仕上げと具材の準備
- 煮た牛肉(②)
- デミグラスソース(⑤)
- にんじん・・・1本
- じゃがいも・・・2個
- たまねぎ・・・1玉
- バター・・・5g
- 塩・・・適量
一晩寝かせたデミグラスソースに昨日煮込んだ牛肉を入れ、30分ほど弱火で煮込む。焦がさないように。
今回は洋食屋っぽい盛り付けを目指すので、付け合わせとなる具材はすべて別で調理する。(面倒ならば一緒に煮込んで完成としても良い)
にんじんはグラッセにし、じゃがいもは茹で、たまねぎはグリルにする。
まずはカット。
にんじんはシャトー。つまりある程度のサイズに切り分けて面取りをする。
じゃがいもは皮と芽を取り去ってくし切り。
玉ねぎは皮を取ったら輪切り。
にんじんは小鍋に入れて、浸るくらいの水、バター、塩を入れて蓋をして蒸しながら煮る。
水分が無くなってきたら本番。蓋を取り、焦がさないようにバターを絡めてとろみと照りを付ける。
水分を完全に飛ばす必要はない。
じゃがいもは水から茹でる。じゃがいもが浸る量の水を入れ、塩を1%程度入れ、あとは竹串がスッと入るくらいまで茹でる。
玉ねぎは塩を振ってグリル。
焼き色を付けすぎると色味が悪くなるので、適度に。
完成
これでビーフシチューの完成だ。
器に盛り付け、付け合わせも盛り、パセリを散らす。
存在感のある牛肉、彩りのある付け合わせ。
一口食べると、ノスタルジックですらある洋食屋の味わいが口いっぱいに広がる。
決して派手な味わいではないが、簡単には出せない味がする。
昭和から続く小さな洋食屋で出逢えた一皿、みたいな。
時間が掛かるので軽率なオススメはしづらいが、苦労に見合う味ではある。
(でも時間の労力を考えるとなるべく大量にまとめて作りたい)